日常生活で当たり前に使っている言葉の中には、仏教由来の言葉というものが少なくありません。
それは原義を残して使用しているものもありますし、原義から転用され、本来の意味から離れて用いられている場合もあります。本来の意味が正しい!とは思いません。
言葉は生き物ですから、時代や文化によって変化するものですし、その方が面白いと思います。
でも、この言葉って元々はこういう意味で使われていたのかぁ、と知ることはとても面白いですし、仏教を身近に感じる事にもなります。
現在、日蓮宗のHPで『じつは身近な仏教用語』
という項目を定期的に執筆させて頂いております。その関係で私の知らない意味や言葉に出会う事も多々あり、とても勉強になっています。
今回とても面白いなぁ、と感じた言葉に「知院事(ちいんじ)」という用語がありました。
みなさんご存知ですか?
実はとても身近な言葉ですが、あまりピンときませんよね。
「知院事」とは、お寺のお坊さんの役割の名前です。
一般のお寺には住職一人という事が多いですが、大きな寺院になると、住職以外にもお坊さんが沢山いて、それぞれ役職があります。
その中で「知院事」とは、庶務的な係です。事務や雑務を統括する役割を担います。
この役職は伝統あるもので、古くはインドの僧院にも存在し、原語のサンスクリット語では[karma-dāna(カルマ・ダーナ)]と言いました。
このサンスクリット語を読み解くと、とても面白いなと感じました。(私だけかもしれませんが)
karma(カルマ)は業と訳され、行いや行動を表します。
そしてdāna(ダーナ)は布施や布施をする人を指します。
つまり、自分の行動や労力を布施する、広く人々の為に施す人を[karma-dāna(カルマ・ダーナ)]と呼び、それが日本語に意訳され「知院事」という役割になりました。
そして、その言葉が時代を経て、略され「知事」となりました。
現在では、都道府県の行政を総括する人を指す言葉です。
原義から読み解くと「知事」とは、行いを人々の為に布施する人であり、それは必ず「行動」する人でなければなりません。『言うは易く行うは難し』と言いますが、口先だけ美辞麗句を並べるのではなく、行動するから知事なのだと思うと、なんだか言葉って面白いなぁと感じますし、襟を正される思いがしました。
瞑想にご興味のある方は、ぜひ「マインドフルネス瞑想@オンライン」にもご参加下さい。
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